佐々木岳久展

「アルベルチーヌの置き手紙に隠された秘籥(ひやく)の嘘」
観念の黒い影の不在-トゥーレーヌで息絶えた細かな真実の断片と
嘘の事実の無数の錯綜

2011年 1月18日(火)〜1月30日(日)
11:00〜19:00(日曜は17:00まで)
月曜(1/24)休廊

BGM制作:
松澤淳志

佐々木岳久 公式ホームページ

マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』…
そこにある神秘的な少女が登場する。彼女の名は「アルベルチーヌ・シモネ」
現実とは裏腹になるか否かが不確定であるような甘美と苦悩を語り手(プルースト)に残し、突如トゥーレーヌの地で落馬事故により生涯を閉じてしまう。
彼女は一体何者なのであろうか…
可能な限りのあらゆる思考を巡らせ追跡してもするりとこぼれ落ち遁走してしまう意識。ここしばらくの間、私を捉えて飽きさせることがない主題であり、さまざまな想像上の「未知なる世界」をもたらしてくれている。
永遠に解き明かすことの出来ない時の鏡に天降った天使…
ロワール川につたわる雨の滴にも似た瞳に映る確立された調和…
肉体という鎧を失った頭蓋骨の髄の染みの絶叫…
存在しない空間を指し示す封印された白き羅針盤…
カペー弦楽四重奏団の錆びた弦が奏でるベートーヴェンの弦楽四重奏曲…
今回の個展は、この「アルベルチーヌ」の永遠の熟睡のなかに透かし見た沈殿物(イマージュ)を掬い取ってみようという試みである。
ただ、真実と嘘が錯綜するアルベルチーヌの置き手紙は、軋む窓の向こう側に永遠の不在の足音や深い吐息を響かせるだろうが、夥しい汗が滲むプルーストの拳に「真実」という名の箱を開く鍵=「秘籥」が握られることは決してないであろう。

プロフィール

1972 宮城県石巻市生れ
1996 多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻卒業(相笠 昌義氏・松本 英一郎氏に師事)
    イタリア、スペイン、フランスへ遊学
2000 第7回 「現代美術小品展」(佳作)/銀座小野画廊
    第3回 「日仏現代作家展」(大賞)/品川O美術館、Studio del' Image(仏/パリ)
    フィナール国際美術展/銀座松坂屋カトレヤサロン
2001 サロン・ド・フィナール・パリ展/Studio del' Image(仏/パリ)
    サロン・ド・フィナール東京・大阪展/品川O美術館・大阪 府立現代美術センター
    第1回 「日仏アートサロン」/香川県 立塩江美術館・丸亀城内展示場
    ふるさと美術展(招待出品)/石巻文化センター
    朝日A展/朝日アートギャラリー(推薦者・佃 堅輔 氏)
2002 サロン・ド・フィナール・パリ展/Studio del' Image(仏/パリ)
    二人展/ギャラリー惺
2005 個展/ギャラリーバッカス

2010 Print-making/ギャルリー志門
    ユニグラバス小品展/ギャラリーユニグラバス銀座館
    個展/ギャラリーユニグラバス銀座館